2017/10/04 20:00

お久しぶりでございます。

今宵は、十五夜ですね。
皆さま、いかがお過ごしでいらっしゃいますでしょうか。
さて、秋の夜長に、お届けいたしますのは、彼方の國の物語。

千夜一夜物語より、香りにまつわるお話を、少しお届けしたいと思います。

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小アジア産の精製阿片を買い込み、さらにシナ産のクベバや肉桂、丁子、しょうずく、しょうが、白胡椒、山蜥蜴などを若干量ずつ仕入れてきました。それから、これらすべてを搗き砕いて、上等のオリーヴ油で煎じました。それから三ウィキーヤのマンネンロウと杯に一ぱい分ほどのコエンドロの実とを買って来て、やわらかにした上、それらすべてを、小アジア産の蜂蜜でこね合わせて練り薬をつくりました。

/東洋文庫  アラビアン・ナイト7
アラーッ・ディーン・アブーッ・シャーマートの物語より

千夜一夜物語の中には数多くのスパイス、植物が登場します。そして上記の媚薬のレシピが登場するのが、第250夜 アラーッ・ディーン・アブーッ・シャーマートの物語(ほくろの物語)。昔、カイロの町に、シャムス・ウッ・ディーンという名の町一番の豪商が、結婚後40年たっても子どもができず、日に日に夫婦仲が悪くなり、仲買人に相談したところ、上記の薬を嘗めるようにとアドバイスを受け、そのようにしましたところ、たちまち妻が妊娠し、子を授かったというところから物語は展開していきます。

このコエンドロこそ、コリアンダーを指します。コリアンダーはタイではパクチー、中国では香菜、中南米ではシラントロと呼ばれ、語源はKoris(カメ虫)+Annon(アニスの実)とされ、未熟果や茎葉の部分にはカメムシに似た匂いがします。一般的には食用のイメージが強いかもしれませんが、種子から抽出されたエッセンスはアニスに似た甘い香りが漂い、甘くスパイシーなあたたかみのある香りで媚薬になり得るのも頷けます。

中世のヨーロッパでも、催淫剤と考えられ、愛の魔法と媚薬の処方に用いられる、魔女のハーブとして使われており、その名残りからワインやリキュールに漬けこまれることも。

種子から抽出されたオイル(コリアンダーシード )は成分的にみると、催淫作用というよりも、柔らかな高揚感をもたらしてくれることに着目すべきかもしれません。

創造性を高め、心の奥底から自信を湧き上がらせてくれます。もし今あなたが、少し情熱を忘れ物事に取り組めなかったり、病気にかかり不安を感じているならば本質を捉え、安心感と治癒の行程を促してくれることでしょう。お嫌いでなければ、自信を取り戻したい時に少し瞼を閉じて、香りを吸い込み、知らないうちに忘れていたご自身らしく過ごせる心地よさを思い返してみてください。

あなたの内なる欲求を汲み取り、
太陽の浴びる時間が短くなるこの季節、
ご自身の情熱で日々を照らせますように。


引用、参考文献
東洋文庫 アラビアン・ナイト(7) 前嶋信次 訳 /平凡社

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案内人:ゆや