2019/03/09 01:15

鏡よ鏡よ鏡さん

世界で一番美しい人は誰? 少女は尋ねました


鏡は答えました

世界で一番美しい人 それは貴女です


鏡よ鏡よ鏡さん

世界で一番美しい人は誰? 少女は尋ねました


鏡は答えました

世界で一番美しい人 それは紛れもなく貴女です


*

*

しかしある晩、少女は何を思ったのか、いつもと同じことを尋ねた後

鏡を粉々に砕いてしまったのです


何故なら少女には、鏡にうつる自分の顔が見えませんでした

少女は、目の見えない女の子だったのです…


*

*


私には見たいものがあるの

皆が春よ春よと騒ぎ立てる、その春の色を

狂い咲き、風に舞う、その花びらの色を

そして、あの人に似ているという自分の顔が見たい


鏡は粉々になってしまった体から、囁くような声で答えました


あなたが見たい春の色は、あなたの唇の色と同じ色です

あなたが見たい花の色は、あなたの指の先と同じ色です

あなたの顔は、鏡の持ち主だった、あの人と同じ顔です


粉々になって少女の足下に落ちてしまった鏡は、

窓の外から差し込む月の光りを反射し

キラキラと輝いて、少女の顔を照らしておりました

*

*

少女は、そっと、呟きました

あぁ…なんて眩しいのだろう。

                                  



                  「鏡よ、鏡 作:ゆや」